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2020-04-30

援農って知っていますか?農業の価値は食物を生み出すだけじゃないんです!


“援農”って知っていますか?

「援農 (えんのう)」ってご存知ですか?私自身は、この取材に行って初めて知った言葉でした。

“応援する農業”と書いて「援農」。その字の通り、農業を営む農家さんをサポートする活動のことです。

人が生きていくうえで必ず必要な“食”。

それを支える農家さんは私たちにとって大切な存在ですが、現代では、新規参入へのハードルの高さや、農業従事者の不足、食料自給率の低さなど様々な問題を抱えています。

そこで今回は、福岡県で援農の仕組みを0から立ち上げ、活動を続ける「Vegetable Days」さんへ取材に行って来ました。

取材に行く前は漠然と「大変な農家さんの作業を、身体や手を動かしてお手伝いするんだろうな」と思っていたけれど、それ以上の意味や価値があることを今回の取材で知ることが出来ました。

その内容をお伝えしたいと思います!

豊かな自然、作業に取り組む大人、楽しそうな子どもたち!

車で福岡県糸島市「スマイルファーム」の木村さんが営む畑へと訪れた私たち。

車を降りて視界に入ってきたのは、青い空と広々とした畑。そして、農業に精を出す大人と、楽しそうにのびのびと作業をして、畑を走り回る子どもたちの姿。

こちらでは「Vegetable Days」の代表:福岡さんが主宰する援農チーム、 そのお子さんたち、 そして「スマイルファーム」の木村さん、初めて「援農」ボランティアに参加するご家族、技術を教えるサポート役の専業農家さん等が一緒になって農作業をしていました。

本日の作業内容は、レモングラスの植え付け。

株分け、耕運、畝立て(うねたて)などを行います。

育ったレモングラスは、ハーブの専門家などを交えて効用や使い方の提案なども行い、新たな付加価値を探りながら販売していく予定だそう。ここは、新たな農業の展開を探る実験場でもあるのです。

少し戸惑いながら、私たちも作業に参加。

子どもたちに手ほどきをうけながら…
一生懸命手を動かして…

大きな空の下で身体を動かす気持ちよさ、農家さんや参加者さんとの交流を楽しみながら、「援農」を肌で感じることができました。

援農を始めたきっかけ

「Vegetable Days」 の代表取締役であり、この援農の立ち上げを行った福岡裕美さんにお話を伺いました。

この笑顔が彼女らしい!

前職では、マーケティングや販売、イベントの運営などをしていた福岡さんは、仕事で行ったあるイベントで、オーガニック野菜を取り扱う農家さんと出会います。

前職時代の福岡さんと娘さん

元々、お肉を食べない福岡さんは、それまでも野菜中心の食生活をしていました。だけど特に野菜が大好きというわけでもなかったそうです。

ですが、その農家さんのオーガニック野菜を食べてみると…

「おいしい!」

当時、妊娠中だった福岡さん。妊娠中はお腹がすきますよね。「野菜だけでこんなに満足感があるなんて…!」と、感動を覚えたそうです。

衝動に突き動かされ、野菜を育てる農家さんの畑を訪れました。現地に行った際「あ、私がやりたかったことは、これだ!」と、直感的に思ったそうです。

援農立ち上げ時代の福岡さんと、チームのみなさん

その後は直感に従い、自分でも農業がしたい!と0から畑の開墾をスタート。

今は手さばきもスムーズです。さすが農家さんですね。

「農業を仕事にしたいんです!」と、農家さんの横つながりを頼りに様々な場所を訪れるうちに、気が付きました。

それは、農家さんによって繁忙期が違う。だから人手は欲しいけど、1年中安定して雇用を生み出せるわけではないのだということでした。

「それなら、春夏秋冬、繁忙期の違う農家さんを集めて、それぞれ人手が欲しい時期に手伝いに行けるような仕組みを作ったらどうだろう?」

それが援農の始まりでした。

援農が生み出す価値:母の目線「子どもたちに本物の“生きる力”を与えたい」

また、自身が男の子、女の子、男の子と3児のママである福岡さん。

「農家さんにお邪魔した時に思い出した『土に触れること』や『外で過ごすことの爽快感』などの私の原体験。子どもたちにも体験させたいと思いました」

シングルマザーで3人のお子さんを育てる福岡さんは、こうも言います。

「もしもまた震災が起きたとして、答えがない問題に遭遇した時…子どもたちはどう生きていけるか?そんなことも考えます。とりあえず、水の飲み方が分かる、野菜の育て方を知ってる、そんなことが大切だって。

理屈ではなく、心や身体で感じる喜びも知っていて欲しいんです。

学校の勉強も大切だけど、子どもたちには、本物の“生きる力”を学んでほしい。だから、生きることと、経済の原点でもある農業体験をしてほしいんです」

また、援農の活動を続けるうちに、意外と農業体験をしたいというお母さん層が多いことにも気が付きました。

生きることの原点である“農業”。子どもを育てるお母さんだからこそ無意識化で求めている声が、彼女には聞こえてきました。

ですが、子どものお世話や家事に仕事など、日常を忙しく過ごしているお母さんにとって、農業を身近に触れられる場所や時間は多くはありません。

「それなら農業を、お母さんたちの仕事にしてしまったらどうだろう」

仕事であれば時間が割ける。身近になる。日常として触れられる。もちろん援農には子どもからご年配の方まで関わって欲しいし、どんどん関わってOKだけれど、お母さんには特に関わって欲しい!という気持ちが強いといいます。

福岡さんと一緒に、援農チームの中でサブリーダーを担っている山田さんにもお話を伺いました。山田さんも、3児のお母さんです。

「援農に来たキッカケは、福岡さんが美容系のイベント会社から援農へと職業を変えていたことに興味を持ったからです。『なんで美容から農業?』って。

私はそろばんの先生もしているのですが、最近の子どもたちを見ていると『答えがないことを考える機会が少ないんじゃないか』って思うことがあります。」

「そして『こけた痛さは、こけてみないとわからない』という経験をすることも少ない。核家族化が進んで、家族という小さなコミュニティの価値観でのみ育っているという現状もあります。

私は、自分で現地に足を運んでみたら、学びがたくさんありました。生産者さんの想いを知ったり、自分が昔、田舎で遊んでいた頃の原体験を思い出したり…。

現地で体験しないとわからないことがあるなって思ったんです。だから、援農を子どもたちに経験して欲しい。」

だから、言葉で聞くよりもまずは経験して欲しい。そして、自分で考える人になって欲しい。そんな思いがあるんです。」

山田さんはお母さんの目線で、そう語られていました。

ああ、福岡さんの想いは、山田さんがしっかり受け取って形にしていたんだな。お2人が会話する姿を見るとそう感じられます。

山田さんのほかにも、同じように「援農」に関わるお母さんはたくさんいらっしゃるんですって。

同じ女性ですがまだ独身の私、正直みなさんのパワフルさに脱帽です。お母さんってすごい。農業ってすごい。

援農が生み出す価値:ボランティアの目線「驚きや発見」

援農ボランティアに初めて参加されたというご一家の姿がありました。

「まさか糸島でレモングラスを育てているところがあるなんて…!という驚きがありました。

私は仕事で、環境に関する取り組みを行っているのですが、その取り組みをお金に変えていく仕組み作りが大切だと思っていて…ここに参加することで、何かヒントになるかもしれないと思いました」

と、お父さん。

「普段はメディアの仕事に関わっているので、畑に来ることが新鮮です。ここでの作業は、人間の営みの根底に気づかされるようですね。」

と、お母さん。

既に様々な職業体験や人生経験がある大人にとっての「援農」。それはきっと自分の中にある問いに対するヒントを得られる場所であり、更に新たな問いや発見を得られる場所なのかもしれません。

普段はお家でゲームをするのが好きだというお兄さんと弟さん。黙々と作業を行い…

「意外と楽しいです」

という感想。素直です。笑

援農が生み出す価値:子どもたちの目線「たのしい!」

ほかにも、援農に参加していた子どもたちに、何人かインタビューしてみました。

「楽しい?」

「うん、たのしい!」

「なにが楽しい?」

「…… (一生懸命考えてる顔) わかんない!」

参加していた子どもたちは、5歳くらいの子から小学6年生まで年も様々でしたが、みんなまだ、自分の気持ちをうまく言葉で表現するのは難しいようでした。

だけど、この体験の中で、子どもたちなりに何かを感じていることは確かです。だって私たちは、その笑顔やパワーに圧倒されてしまうから。

みんなの感性が未来に向けて育まれている瞬間に立ち会ったような…、現場で私たちは、そんな気持ちにさせられたのでした。

援農の価値は食物を生み出すだけじゃない

「援農って、農業体験が出来るのはもちろん、教育、商品開発、マーケティング、販売など様々な要素がここに詰まっているんです。」

と、福岡さん。

農業は確かに力仕事もあるし、キツイこともあるけど、いかに楽しくしていくかが大切だといいます。援農を体験した人の中で、次世代や新たなコミュニティを生み出していきたいと仰っていました。

「とりあえず畑に来てみて!」

現地でしか感じられないことがあるから、と。

援農の現場では、様々な出来事が起きていました。 食料の生産はもちろん、 農家さんの人手不足の解消、未来の農家候補の子供たちの育成、大人の再教育、個人単位での小さな発見や価値観の変化…。

そんな創造の現場を体感出来るのが“援農”なのでした。

「まだまだ課題もたくさんありますし足りてないところもあるってわかっていますが、気が付いて欲しいから、手を止めません」

組織の仕組み化や育てた作物の利益化、販路の開拓など、課題はまだまだたくさんあります。

ですが、課題や問題が目の前に山積みでも、かき分けて笑顔で前に進む力。彼女にはそんな力強さと明るさを感じます。

新しい形の農業の未来を創るのは、こんな人なのかもしれないなあ。そんな風に感じた私たちなのでした。

あなたも!さあ、現場に行こう、体感しよう

ご興味のある方は、(ひとまず、四の五の言わず?!笑) ぜひ、現地へ足を運んでみてくださいね。

きっと自分の中に、何かを得て帰ってきますよ!

援農:番外編

後日、私たちは、別の援農の現場に伺いました。

違った迫力で、これもまた援農!

みなさん、かっこいい!

お問い合わせはこちら

「援農」に興味を持たれた方は、こちらにお問い合わせください。

「ベジタブルデイズ 援農事務局 」

TEL:090-7469-3269 (担当:福岡)

住所:福岡県福岡市城南区樋井川2-12-22-101


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