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2020-05-22

宗像の商品で繋がる事業者たち。そこで生まれた魅力と仕組みとは|むなこれ


福岡に住んでる方なら聞いた事があるかもしれない「むなこれ」。

「むなこれ」は宗像市の工芸品やお菓子、食べ物などそれぞれの事業者が集まりイベントや販売を行う「むなかたアートコレクション」の略です。これまで、岩田屋や井筒屋などの百貨店を中心に、宗像の商品を並べてきました。そんなむなこれを率いる代表者にお話を聞き、むなこれが始まったきっかけや魅力などを紹介していこうと思います!

民間のみで運営される「むなこれ」

むなこれのメンバーは宗像市の商品を扱っているそれぞれの企業の経営者たち。その約9割が個人経営で夫婦でやっているような小さな企業です。

現在は30件近くの会員がいるむなこれですが、行政などの支援に頼らずに民間のみで運営されています。決して少なくはない人数で、どうしてこんなにもまとまっているのだろうか?この取り組みが続いているのはなぜだろうか?その仕組みはなんなのだろうか?そんな疑問が次々と湧いてきます。

むなこれが始まったきっかけ

むなこれが発足する前から、商工会が主催の団体がありました。そこに所属していたのが、今のむなこれの会長・伊藤幹⽣さんと、副会⻑・吉村⼀彦さんです。

写真右が吉村さん。写真奥が伊藤さん。

お二人はその頃、認定された商品しか紹介できないことや、行政と民間が一緒に協力して活動することの難しさを感じていました。

そんな時、ガラス工芸などを揃えている「吹きガラス工房 粋工房」さんに、福岡の百貨店から催事のお願いがありました。

「宗像のものを使って宗像コーナーを作りたいのでお願いします。」

工芸品だけじゃ物足りない!ということでスイーツや調味料などの、宗像の商品を扱う事業者さんに声をかけて、商品を20社ほど集めました。そして「むなこれ」という名前をつけて催事に参加。

その時に参加できる事業者さんたちだけで集めた宗像の商品でしたが、無事にイベントも終わり、そしてその流れでまた次の百貨店からお誘いを受けます。

前回の催事で参加した事業者さんたちは、また次も参加したい!という意見が多く、催事をお願いされれば、その度に参加者それぞれが自己負担で参加することが2年ほど続きました。

本格的な「むなこれ」としての始まり

そしてむなこれが出来てから2年目。むなこれに参加する事業者さんも25件ほどになっていました。

店内の商品の見せ方などは九州産業大学の生徒さんに協力してもらったそう。

そんななか、何度か活動もしてきたし本格的にむなこれを団体として動かしていこう!という動きがありました。以前までは、認定商品しか表に出せないことなど、自由な動きが出来ない事が問題点でした。そんな経験をこれまでしてきた吉村さんや伊藤さんは、むなこれにどういった仕組みが必要なのか、という事が明確でした。

以前の経験から、“行政の力をなるべく借りずに、自分たち民間だけで運営する事でそれぞれ自由な動きができるようにしよう”という目標を掲げました。

認定商品だけじゃなく、どんな商品も同じように並べるために。

自分の商品を売りたい!と思った人がそれぞれ頑張れるように。

そうしたことで、行政に頼らず、それぞれのメンバーが売りたい商品をちゃんと売れるような場所である「むなこれ」の仕組みが出来ていったのです。

むなこれと消費者の関係

個人経営の多いむなこれのメンバーは、毎度催事のたびに店頭販売ができるわけではありません。自分の店にもいないといけないし、やらなければいけない仕事もある。

しかし、私たち消費者にとって、お店に生産者が立って商品の説明をしてくれるということは、とてもありがたい機会です。

例えば「このお醤油ってどこが魅力なのかな?」という疑問を生産者に直接聞けるから。「これは○○産の材料しか使ってないんですよ。他のお醤油屋さんとは△△が違います」と作っている人が教えてくれるのです。

消費者にとって生産者が見えることは、安心につながります。どこの誰が作っている商品なのかが明確だから。「この前おすすめしてもらったお醤油、とっても美味しかったよ」と直接いってもらえることも多く、消費者と生産者が直接繋がれる「むなこれ」のお客様はリピーターさんも多数。

少しずつ増えていった品揃えの多さも、魅力のひとつです。

なんとなく入ったコーナーにたくさんの品が並び、その中から好きな商品を探し出すのも買い物の醍醐味ですよね♪

直接繋がる事で生まれる価値

むなこれの知名度が少しずつ上がってくると、会員になりたいという人も増えてきました。最初は、「商品が売れるから、むなこれの会員になる」という人も多いと言います。「でも、そうではないんですよね」と吉村さんは言います。

むなこれの商品の一つとして店頭に並ぶ事が大事なのではないのです。もちろん全員が店頭に立てるわけではありませんが、むなこれの場を使って消費者と直接繋がる事が、売れることにも繋がる手段だということを、これまでお客さんと繋がってきた吉村さんは感じているようでした。

「次はいつ来るの?」「お土産持ってきたんよ〜」といって声をかけてくださるお客様もいるとか。きっと商品だけでなく、生産者の方の魅力も含めてファンになってくださるのだろうなと筆者は感じました。

始まりは「自分の商品を売りたい」

「以前は宗像市には小売店が少なくてみんな外に売りに出ていたんですよね。」と語る伊藤さん。

むなこれの商品を展開できるのも百貨店の協力があるからです。しかし、売り場に出したからといって、勝手に商品が売れるわけではないということも自分たちの経験から学びました。商品を売るためには、どんなふうにお客様に声をかけたら良いのか、どんなことを聞きたがっているのか…たくさんの催事を通して、むなこれのメンバーの皆さんは手に入れてきました。

「むなこれの商品なら、自分の店以外の商品の紹介もできるようにしとかんといかんよね。」と、他店の商品でもある程度の説明はできるようになっていったそうです。

筆者は、むなこれについて、宗像を盛り上げる活動の一環として行っているものなのだと思っていました。

「そうじゃなくて、自分の商品を売りたい!が本来の思いなんです。」という吉村さん。商品を売りたいという共通の思いを持った生産者の方が集まっているから、それぞれが売れるように工夫し続けている。そんなむなこれのメンバーがいるから、結果的に、宗像という地域が注目されたということか!と納得しました。

むなこれのこれから

そんなむなこれの皆さんの最終目的は『お店にきてもらうこと』。存在を催事で知ってもらって、自分たちのお店に買いに来てくれる事が1番の目標です。そんな目標の第一歩として、宗像でイベントを行います。「ワークショップむなかた」と称して、宗像の工芸品を使ったアクセサリー作りや、風鈴の絵付け体験などを行い、実際に体験して楽しんでもらうのです。

「欲しい!」「買いたい!」というお客さんに買ってもらうには、まずどんな商品なのか、存在を知ってもらわなければいけません。商品を買って欲しいと思う限り、伊藤さんや吉村さんをはじめとした、むなこれの活動は続きます。


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