福岡できくらげ栽培事業|農家再生と障がい者支援の6次産業化
今回、取材に伺ったのは福岡県筑後市にオフィスを持つ「天佑株式会社」さん。一般企業への就職が難しい障がいや難病などを抱えている方へ、働く場所を支援する「就労支援A型」の事業を行っている会社です。
お話を伺った「天佑株式会社」代表:新城孝明さんは、前職では介護の仕事を経験。常に人と向き合い、正解やゴールのない仕事はやりがいもありますが難しく、力仕事などの肉体的な負担に加え、精神的な負担もかなり大きかったといいます。
また、現場のスタッフの立ち位置では「組織の体制や現場の改善を行うのが難しい」と感じたことから、0から仕組み作りをするべく、独立を決意されたそうです。
現在は、廃材シートベルトを使用した「シートベルトバッグ」の製造を中心に、施設外就労(人材派遣)事業などを施設スタッフのみなさんと行っています。
福祉・介護・障がい者支援にやりがいを感じ、懸命に取り組んできた新城さん。そんな新城さんの次なる展開は…なんと、きくらげ栽培?!
「一体どういうこと?」
そんな疑問を抱きつつも、新城さんにお話しを伺ううちに、 福祉・介護・障がい者支援の新たな仕事の作り方、そして同時に、農家再生の道が見えてきたのです。
なぜ、キクラゲ栽培を始めたのか?
新城さんに、なぜ、きくらげの栽培を始めたのか伺いました。
「キッカケは、昨年知り合いから『自然栽培で出来るから、きくらげは比較的簡単に育てられるよ』と教えてもらったことです。
きくらげの良さは、育てやすいことです。基本的には自然に近い環境で育ちます。気を付けることは、二酸化炭素を吸い込むと形が変形するため、通気性の良さを保つことと、高温や直射日光を嫌うため、日を遮ることくらいでしょうか。
収穫作業はちぎるだけなので、身体への負担も少ないです。
更なる利点は、設備への初期投資が少なくて済むこと。電気やガスはいらず、必要なのはたっぷりの水だけです。使われていない牛舎などを再利用すれば、最初にかかる総工費は10~20万円程度です」
牛舎をきくらげ栽培に再利用…?2つがすぐには繋がらない方も多いと思いますが、どういうことなのでしょうか。
「廃業された農家さんの牛舎を再利用しています。牛舎を洗浄し、菌床棚(きくらげを並べて育てるための棚)は自分たちで組み立てました。
資材には海苔養殖用の支柱など、廃材を利用し、苗床を陳列していきます」
きくらげ栽培が解決する2つの課題
つまりきくらげ栽培は、コスト面や技術面で、新規参入がしやすい事業だったということですね。
「そして、このきくらげ栽培事業には2つの側面があるんです。1つは、廃業された農家さんの新たな仕事を生み出す“農家再生”の一面です。
特別な技術がいらないことから、他の作物を作っていた農家さんも挑戦しやすく、新たな利益を生みだす柱になる可能性があります。
また、きくらげ栽培をその土地に根付かせ、価値を生み出していきたいと考えており、〇〇産(その土地の名前)と、ブランド化を行っていくビジョンも持っています。
もうひとつは、障がいのある方が働く場所を生み出す“障がい者支援”の一面です。
水やりや牛舎の掃除などを仕事として「天佑株式会社」で請け負っています。
また、私が新たな仕事を受ける際には、身体や心に何かしらの負担があるスタッフにとって“体調を維持しながら働ける仕事”であるということをとても大切にしています。
緑が多く、空気のきれいな気持ち良い環境で働くことは、結果的にスタッフのストレス解消にも繋がっているようです」
きくらげの6次産業化
“農家再生”と“障がい者支援”、2つの課題を解決するきくらげ栽培事業。それだけにとどまらず、新城さんはきくらげを加工品にする「6次産業化」にも取り組まれています。
6次産業化商品の「コンダケ」は、きくらげ収穫後の1次加工を「天佑株式会社」が行い、
製品として形にする2次加工を福岡県みやま市「江の浦海苔本舗」に委託。
パッケージは、福岡県筑後市「宮田織物」の端切れを使用し「天佑株式会社」にて裁断・縫製しています。
「地域の方とコラボして商品を生み出すのは楽しく、自分だけではできない新たな売り出し方なども生まれます。人が集まる場所が経済を作ると思っているので、積極的に人を巻き込んでいきたいです」
と、新城さん。
この小さな瓶の中に、農家さん、天佑のスタッフさん、地域の企業のみなさんなど、本当にたくさんの人の想いが詰まっているんですね。
天佑の目指す姿
「いま、きくらげと同時に、サーモンの養殖や食用コオロギの生育事業も立ち上げ、挑戦しています。
障がい者支援というと、焼き菓子の製造や雑貨の制作などの軽作業が思い浮かばれる方も多いかもしれませんが、それ以外にも、スタッフの個性を活かして楽しんでやれる仕事があるはず。
視点を変え、視野を広げて、やりがいのある仕事を自分たちで創り出していきたいと思っています」
きくらげ栽培による農家再生と障がい者支援。まずは6次産業化商品をあなたも手に取ってみて
きくらげ栽培から生まれた農家再生と障がい者支援事業。
そしてきくらげを使用した6次化商品は地域の方の仕事を生み出し、更にかかわった皆さんの熱い想いも詰まっています。
とても面白い取り組みだと思いませんか?こんな考え方をしたことがなかった私は驚くと同時に、感動してしまいました。
この記事を読まれて、新城さんの多角的な視点での仕事づくりや取り組みに興味を持たれた方は、まずはじめに「きくらげ海苔佃煮」を手に取ってみてはいかがでしょうか。
商品の購入で利益が農家さんや天佑スタッフさんに循環し、私たちも新城さんの活動に一部貢献することが出来ますね。
商品購入先
「天佑株式会社」へのお電話・メールにてご購入が可能です。ご連絡先詳細は下記インフォメーションをご参照ください。
天佑株式会社 インフォメーション
住所: 833-0016 福岡県筑後市常用824−3
定休日: 日曜日・年末年始
TEL: 0942-65-8743