生前準備のお骨壷|英一郎製磁
■「英一郎・お骨壺作陶」のはじまり
福岡県春日市。そこで焼き物が作られているとは思えない閑静な住宅街という場所に、窯をかまえた工房「英一郎製磁」がある。
代表の森永英一郎氏のルーツは10代にわたり江戸時代より波佐見焼を生産してきた窯元「福幸製陶所(幸山陶苑)」。
彫刻的繊細な要素を無彩の白磁に施す世界観はここでつくられる。
英一郎製磁が「骨壷」を作り始めたのは7年前ほど。
それは知人からの依頼で、若くして亡くなった親族のための「骨壷」作陶からだ。その骨壺づくりを通して、残された家族、故人へ骨壷を作ることの想いに触れたことがその後の骨壺づくりのきっかけになっている。
■使命「骨壷」づくりの意味
骨壷といえば、葬儀会社のカタログからその場で選ぶのが一般的。死をイメージさせる骨壺は話すことさえも避けられきてたが、「人が最後に入る“終のすみか”であり、残された家族の“想い”が入るのがお骨壷」という英一郎氏は骨壷づくりを決意。
「墓石を事前に準備するのは当たり前になっている。骨壷も事前に準備するには故人、家族の想いが入る要素が必要だと感じました。焼き物の家系に生まれながら彫刻家を目指した時もあったからこそできる骨壺づくりが使命」だと、今、英一郎氏は骨壺づくりを「使命」と言い切る。
■白磁彫刻家・英一郎がつくる骨壷の世界
デザインは従来のお骨壷のイメージにとらわれない。
工房には、製作途中の様々なお骨壷が並ぶ。
ここにはご本人様からご依頼のお骨壺もあれば、ご家族からご本人様へ贈るお骨壺もある。
「ひとつひとつ手作業のお骨壷はひとつひとつ微妙に違いがあります。それは手作業だからというのもありますし、湿度や気温といった環境にも左右されます。ですが、ひとつひとつにかける気持ちは同じです。」
■脚本家 故市川森一先生のペアお骨壷
2011年12月にお亡くなりになられた脚本家市川森一先生(大河ドラマを始め数多くのドラマや映画を手がけた日本を代表する脚本家)のペアのお骨壷。
2012年2月、英一郎銀座個展会場に奥様である女優柴田美保子様がお越しになりペアでのお骨壺のご依頼(奥様には生前に準備されたお骨壷)。
「象徴的」で「モニュメンティブ」なものをとのご要望を頂き市川先生が生前愛されていた自然、森、楠の木などをモチーフに。
■“終活” 生前準備に広がる英一郎のお骨壺
女性の方を中心にご依頼が多い「生前準備のお骨壺」。
英一郎氏は「生前はお気に入りのアクセサリー入れなどに使われる方がおられます。」という。
独自の世界観を創る磁器彫刻作家・森永英一郎氏
無彩の白磁に彫刻的なアプローチを試み、従来の焼き物のイメージにとらわれない独自の作風を確立。