なぜ「糸島産ふともずく×博多女子高等学校」だったのか?
たった1年あまりの活動で東京のメディアから全国へ発信されるまでになった「糸島産ふともずく」。
そこに関わったのが博多女子高等学校の18名。
「女子高生がどうしてもずく?」とよく聞かれるそうです。
彼女たちは夏、冬に商業高校生の大会でこの「糸島産ふともずく」の取り組みの発表をしました。先日、行われた「第9回商業高校オリンピック」ではこの1年あまりの活動内容を発表しています。
その発表で使われた原稿に一般の方向けに少し修正を加えさせて頂き、「糸島産ふともずく×博多女子高等学校」の物語を彼女たちの発表からご紹介したいと思います。
■円滑な取り組みに必要だった「産学官+民民」の新たな仕組み
私たち博多女子高等学校の商品開発のメンバーは2016年9月から糸島産品の販路開拓や広告宣伝、商品開発を一体的に行うマーケティングモデル推進事業に取り組みました。
目的は地域の小規模事業者が継続的に発展し、新たな雇用を生みだす流れを地域の中で創る地方創生です。ですが、取り組みも継続性がなければ目的を達成することはできません。「個々では出来なかったことを皆で創り上げる」という活動には円滑な連携が必要です。
そこでJF糸島芥屋支所もずく部会の漁師、私たち博多女子高等学校、糸島市の「産学官」に加え、糸島市食品産業クラスター協議会、㈱アジアン・マーケットの5団体で「産学官+(プラス)民民」という形で連携することにより、円滑な活動の土壌をつくり、まだ途上ですが1年目の取り組みで「糸島産ふともずく」販路の拡大、売り上げの向上が実現しました。
■「実践力」と「継続力」がある博多女子高等学校の商品開発・商業実践の貢献力
糸島産ふともずくは、約15年前から養殖をはじめ5年前程から安定して収穫できるようになってきたそうです。
ですが、売上がなかなか向上しない状態が続いていました。その原因は漁師さんにはマーケティングや販路開拓・営業の知識・時間がない事と、糸島市内2ヵ所の直売所でしか取り扱いがなかった事だと考えました。
その原因を解決するために私たち博多女子高等学校の役割は漁師さんたちの苦手な分野を補い、サポートすることです。
商品開発の為のマーケティング活動も、販路を開拓するための営業も私たち自身で行います。
アポ取りも営業の打ち合わせもです。その「実践」を私達が行い、漁師さんに引継ぎました。
2年生時の商品開発の授業から3年生時の商業実践の授業までメンバーは持ち上がりで継続した活動を行います。そして、私達が卒業をする前に2年生の後輩たちへ引継ぎます。
私達は卒業してしまいますが、地域の活動に卒業はありません。後輩たちが引き継ぐことで、「継続した活動」を地域と連携することが可能になります。
■「糸島産ふともずく」の取り組み「産学官+民民」の特長
【産】は、JF糸島芥屋支所もずく部会に所属する漁師の方々です。糸島産ふともずくの養殖を行っていますが問題点は思ったように売上が上がらない事で、生活の為に農業も行い、半農半漁という状態でした。しかし、漁師の方たちの得意な点は、ふともずくを作ることです。この問題点と得意な点を私たちと連携することで補い合い、一緒にふともずくを広める為に連携した活動を始めたのが「産」である4人の漁師さんです。
【学】は私たち「博多女子高等学校」です。「こんなものがあったらいいな」をコンセプトとし、生徒が自らマーケティング、商品開発、営業、販売、プレゼンテーションなどを行う「Hakata Girls Shop」という模擬会社を運営しています。人材育成を目的とし、実際の企業と同じような活動を行っています。
現在は、販路開拓から売上向上を目的に出口を見据えながらマーケティング・商品開発を行います。これまでに食品や化粧品など幅広い商品を15種類以上開発しました。
【官】は、糸島市です。
糸島産の農畜産物や海産物は”糸島ブランド“が確立しており、そのブランド食材や加工品を販売している直売所の伊都菜彩は、全国のJAの直売所の中で売上一位になるほどです。
このように、ブランドが確立している一方で、雇用が少ないのが現状で、仕事を求めて若い人の人口が流出してしまっています。今回、ふともずくを通して前よりもっと糸島市のこともPRでき、さらに販路の拡大、売上の向上が見込めるようになってきましたので、雇用創出にも繋がりそうです。さらに、糸島市がサポートしてくれる事により多くの方に信頼していただき、たくさんの協力を得ることができました。
また、商品開発では産学官での活動はよく耳にしますが、より「円滑な連携と継続性を持たせるため」に、私達は産学官に加えて2つの民間の団体・企業と連携しました。
【1つ目】は地域で幅広くサポートをしあえるように、糸島市の食品加工会社などが連携し、販路開拓や地域ブランドの創出を図るために構成された糸島市食品産業クラスター協議会です。
今回、食品という分野で糸島を地域で支えるクラスター協議会と連携することにより、販路開拓やPR活動に広がりが出るようになりました。また、地域の人達に幅広くこの活動を知って頂けることになり、将来的に糸島地域のモデル的な取り組みに繋がっていける連携を目指しています。
【2つ目】はそれぞれ目的が違う産学官民が円滑に連携できるように、開発メーカーでもあり小規模メーカーのバックアップ活動も行う㈱アジアン・マーケットです。㈱アジアン・マーケットは産学官民の現場同士を繋ぐ調整役を担ってくれています。例えば、私たちの学校でマーケティングや商品開発、営業などの講義や実践のサポートをして頂いたり、目的が違う5団体の溝を埋める為の企画を考えたり、様々な手段を用いて情報を発信してくれています。
この「産学官+(プラス)民民」の取り組みで、それぞれの役目が円滑な連携で繋がり、継続的活動が出来る環境ができました。
■博多女子高等学校にとっての人材育成が実践の場
私たち学校が抱える問題は、授業で勉強はできるが、継続的に実践をする場所がないことです。
そのため、私達は今回、糸島市の漁師の方々と協力し、マーケティング・パッケージ作成・販売実習・営業・販路開拓などで活動をさせて頂きました。
そのなかで授業だけでは分からない知識や経験を得ています。
コンペティッションやイベントなどに参加することでその準備から含めて色々な分野の方とも関りを持てるようになりました。
■「糸島産ふともずく」の活動の始まり
私たちは糸島市、糸島市食品産業クラスター協議会から提案された素材に対して、糸島市から提供されたRESASや糸島市などのデータを使い、人口推移・海産物購入・雇用流出などさまざまな視点でのマーケティング分析から「糸島産ふともずく」を素材にすることを決めました。
福岡市の女性の人口割合を見ると30代・40代が全体の35.8%を占めていることからターゲットを、家庭をもつ主婦にし、マーケットを糸島市内のみの現状から福岡市及び近郊に広げ、より糸島産ふともずくの知名度・売上を上げられるように定めました。
パッケージには、ターゲットがひと目でわかるように主婦のイラストをのせ、「食物繊維」「ミネラル」「フコイダン」の3つの栄養素を表示しました。
また、私たち自身でもどんな料理に「糸島産ふともずく」が合うか試しました。
多くの方がレシピを発信できるようにパッケージにはQRコードを載せ、クックパッドの福岡県公式ページと連携し、おすすめのレシピがわかるようにしています。
【営業活動】では、販路を広げるためにスーパーマーケットに営業に行くという意見も多くありましたが、スーパーマーケットでは掛け率を低く設定する必要があり、漁師の方の利益が少なくなるなど、問題があったため、掛け率が比較的高くても大丈夫な直売所を中心に営業を行うことにしました。
福岡市内及び近郊の直売所をリストアップし、ふともずくを販売できそうな店舗に私たち自身で電話をし、アポイントをとり、見積書を作成して伺い、初回に9箇所へ営業活動を行いました。
以前は、ふともずくが売られている店舗は糸島市内の2店舗でしたが、今では9店舗に増え、更にお取り扱い店舗が広がっています。
【プロモーション活動】では、テレビやラジオ、新聞など様々な方法で糸島以外の方に対して「糸島産ふともずく」の特徴や私たちの活動を伝えることができました。
【販売実習】では、販路開拓後の顧客創出活動ために産直店、モール、百貨店、イベントなど様々な店舗でその店舗に合った販売を行いました。
私たちが取り組みを始める前の2016年4月~11月と取り組みを始めてからの2017年4月~11月の売上は前年比約2.4倍になりました。ここからもっと大きくなっていくと思います。
■社会からの評価
日本最大級の食のコンテストである農林水産省主催「第9回フード・アクション・ニッポンアワード2017」に挑戦しました。
全国から応募があった1,111産品の中から、100産品に選ばれ入賞し、さらに、東京で開催された最終審査会で受賞10選のひとつにローソンさんに選んで頂きました。
そして、「糸島産ふともずく」を加工品としてローソンさんで販売することが決定しました。
11月に開催された福岡県産業デザイン協議会主催「第19回福岡デザインアワード」では地域活動部門で入賞致しました。
審査会場ではJR九州の唐池会長、福岡県の小川知事が私たちのブースまで来られました。私たちから直接ご説明をし試食もして頂き、私たちの地域との活動を評価して頂きました。福岡の多くの方に知って頂ける機会となりました。
■「糸島産ふともずく×博多女子高校」のこれから
この1年以上の取り組みを通して、人前で話すことが苦手だった私達は自分達自身でも気づけるくらい成長できたことを実感しています。
現在、2年生と一緒に販売実習に行き、私たちが今までやってきた事とそれに対する思いを引き継ぐ活動をしています。また、2年生が商品開発に取り組んでいる糸島の鯛だしスープ(仮称)とも連携していく予定です。
今後も「産学官+(プラス)民民」という新たな枠組みの中で、私たちの役割として博多女子高等学校だからこその活動を続けていきます。そして、私達から後輩たちに活動を繋げ、後輩達自身の成長と一緒に雇用創出に繋がる地域の発展に結び続けていきたいと思います。
【糸島産ふともずく】の地域との活動
JF糸島芥屋支所もずく部会の漁師さん達と博多女子高等学校の生徒達の2016年9月から始まった物語があります。
知って頂けたら、食べずにはいられなくなるかも?!
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