toggle
2025-11-10

秋月に今も息づく食文化「久助葛」の魅力|廣久葛本舗


昔ながらの街並みが美しく、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定される福岡県朝倉市秋月。

秋月は鎌倉時代の秋月氏、江戸時代の黒田氏によって形成された歴史ある城下町で、「筑前の小京都」とも呼ばれています。

秋月街道

この町には、江戸時代から続く貴重な食文化が今も息づいています。

今回は、創業文政2年(1819年)から、10代にわたり本葛を作り続けてきた「廣久葛本舗(ひろきゅうくずほんぽ)」と、その代表商品「久助葛(きゅうすけくず)」の魅力をご紹介します。

葛ってなに?

そもそも”葛”ってなにかを、意外と詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

今回お話を伺った「廣久葛本舗」10代目:髙木久助さんに教えていただきました。

葛とは、マメ科のつる草で、葉は乾燥してお茶に、花は薬に、茎は繊維に。根は砕いて水にさらしデンプン質を取り出すと葛粉になる、日本古来から親しまれてきた植物。

葛粉のデンプンは、じゃがいもやさつまいもより粒子が細かく、なめらかな口あたりになるのが特徴です。

中でも「久助葛」は水に溶けやすいのが特徴

主成分はデンプンですが、葛根にはサポニンやイソフラボン、食物繊維などが含まれており栄養豊富。消化吸収が良く、難消化性デンプンが善玉菌のエサとなるため、最近では腸活の食材としても注目されています。

お湯で溶くととろみがつき、冷えると固まる性質があるため、「葛餅」や「胡麻豆腐」など和菓子や料理などに幅広く使用可能。

飲み込みやすく、離乳食や介護食にも適しているため、「生まれて初めての食事から最後の食事まで使える」万能な素材として重宝されています。

廣久葛本舗と久助葛について

「廣久葛本舗」は文政2年(1819年)に創業。

初めは蝋燭屋と造り酒屋を営んでいましたが、全国的な飢饉で幕府の財政が逼迫し、各藩に産業復興を命じられたことをきっかけに葛づくりを始めました。

初代「髙木久助」さんは、独学で葛づくりを試みるも失敗。その後、和歌山県の保田村で修行を積み、秋月に戻って製法を確立しました。

仕上がった葛は藩主に献上され、その質の高さから江戸幕府への献上品にもなります。

明治以降は宮内省御用達、また、昭和天皇即位の大嘗祭の折の献上品にも選ばれた名誉ある「久助葛」。

ですが、長い歴史の中では、消滅しかけた危機も。

今回お話を伺った10代目のお父様の代のこと。戦後の食の西洋化に伴い、それまで飲食店や和菓子屋への卸売が主流だった葛の売上が大幅に減少しました。

「葛の文化を何とか続けていかなくては」

と、当時お父様が開発したのが、現在も販売されている「くず湯」。

当時、一般のお客様に葛を直接販売するのは画期的なことで、大変人気を博したそうです。

こちらが「くず湯」。 お湯を注ぐだけで手軽に楽しめて、心も体もほっと温まる味わいです

また、さらに10代目になって始めたのが「ネット販売」でした。

当時まだWindowsもない時代から、葛屋として全国で初めて取り組み、様々な地域へ葛を発送していました。

「久助葛」は、10代続く髙木久助によって、消えてしまわないように大切に受け継がれてきた秋月の食文化なんです。

秋月で葛製造が始まった理由

初代が葛作りを始めた当時、秋月周辺には葛が豊富に自生しており、寒暖差のある盆地特有の気候、水の清らかさが葛づくりに最適な土地でした。

街のいたるところに川がある風景が秋月の魅力のひとつ

しかし戦後、復興政策で自然林が伐採され、杉や檜の植林が進められたことで、生態系が崩れ、葛の採取は難しくなります。

「廣久葛本舗」も現在は主に鹿児島県産の葛根を使用していますが、製造には今も秋月の清らかな水と冬の寒冷な気候が欠かせません。

秋月武士のプライドが文化を守る

秋月の町全体に、江戸時代から続く「武士の誇り」が今も息づいています。

高度経済成長期に道路拡張のために古い町並みを壊す計画が持ち上がった際、住民たちは一丸となって反対し、歴史と文化を守り抜きました。

髙木さんは「文化は真似できない」と語ります。

西洋文明を追いかけるのではなく、自分たちの文化に誇りを持つ——その精神は、まさに秋月武士の矜持そのもので、だからこそ現代まで街並みや食文化が残り続けているのです。

「廣久葛本舗」も同じく、流行や効率化の波に飲まれることなく、伝統を貫いてきた存在です。

廣久葛本舗の久助葛づくり

100kgの原料から7kgしか得られない貴重な「久助葛」。

200年受け継がれた職人技は、製造工程の1つ1つにこだわりが詰まっていますが、特に私たちがお伝えしたいと感銘を受けた工程をご紹介します。

マニュアル無しの一子相伝!

「廣久葛本舗」では、葛づくりの工程がすべて職人の五感に委ねられています。

驚くことに、マニュアルは全く存在せず、味・色・匂い・音・手ざわりで仕上がりを見極める——まさに“一子相伝”の世界。

10代目:髙木久助さんはこう語ります。

「当たり前のことを当たり前にやり続けることが一番難しい。でも、それが一番大事なんです」

機械化や大量生産が進んだ時代にも、自然や素材と向き合い、手作業で作る姿勢を貫いています。

純国産の原材料

使用する葛根はすべて、山野に自生する30~50年ほど育った天然の国産原材料のみ。根の大きさに驚きです!

昔ながらの製法で純粋な本葛だけを作っています。

自然乾燥

最終工程で乾燥にかける時間は、なんと半年から1年ほど!

機械乾燥だと乾くスピードが早すぎて口どけが良くないのだとか。

自然乾燥させることで、粒子が傷まず、水分を吸収しやすくスムーズに水に溶け、口にしたときのなめらかな口どけと透明感を生みます。

薬品を一切使わない

製造に防腐剤、消泡剤、Ph調整剤、漂白剤などの化学薬品を一切使用せず、自然の水と寒さだけで精製。

あまりにも美しい白色に仕上がることに驚きです!

環境にも人にもやさしい製法です。

100%本葛のみを使用

市販の葛粉には、じゃがいもなど他のデンプンを混ぜて販売しているものもありますが、「久助葛」は100%本葛のみです。

おいしさに感動!本葛の食べ方

取材開始から2時間半ほど経ち、髙木さんから「久助葛」の文化や魅力が充分に伝わってきたタイミングで気になったのは、やっぱり味。

正直にお伝えすると、私はその日まで葛にあまり親しみがなく、味に関しては未知数でした。

火を入れると、白い液体だった葛が透明で粘り気がある状態に

実際に目の前で作っていただき、出来立てを口にしてみると……

「感動するほどおいしい…!!」

雑味が全くなく、身体にスッと溶けていくような、素朴な染み渡るおいしさにビックリ。

作りたての本葛にきなこと黒蜜をかけて食べると、またまたおいしいんです。ずっと食べていたい。。。

澄んだ透明のものが葛。手作りのきなこと黒蜜をかけて

もしこの記事を読んで興味を持った方がいたら、自分で作った出来立てを食べて欲しいです……!

手作りするときは「廣久本葛」をお買い求めください♪

アツアツで食べればやさしいとろみとほのかな甘み、冷やせばぷるんとした弾力が楽しめます。

文化と誇りが詰まった久助葛、ぜひ一度味わってほしい!

取材では、髙木さんの言葉や態度の端々から伝わってくる、秋月武士から続く強い信念・誇り・自尊心、そして確かなものづくりこそが、「久助葛」が200年以上続く理由と感じられました。

受け継がれてきた本物の味は、本当においしかったです。

この記事を読まれたあなたにも、200年以上続くおいしさを味わっていただけたら嬉しいです!

実際に購入できる店舗

【実店舗】

☆記事下部インフォメーションに記載のある「廣久葛本舗」敷地内の直売所でも購入可能です。

マキイ

住所:〒810-0014 福岡市中央区平尾5-19-1

TEL:092-522-7000

年中無休・24時間営業

ナチュ村 天神パルコ店

住所:〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神2丁目11-1 福岡パルコ本館 5階

TEL:092-791-7365

営業時間:10:00~20:30

定休日:パルコの休館日に準ずる

【オンラインショップ】

公式オンラインショップ:https://www.kyusukekuzu.jp/

☆秋月ラストサムライパフォーマンス「葛職人サムライ」

記事中の髙木さんが侍の甲冑や、はおりを着ていることに気づいていましたか?

「廣久葛本舗」内の喫茶「葛の花」では、築280年の古商家で10代目の高木さんが、甲冑を身まとい、季節の葛菓子を実演しています(不定期開催)。

「ラストサムライ」の名前は、秋月が1876年(明治9年)に明治新政府との戦い「秋月の乱」で、侍としての誇りを賭けて戦った日本最後の侍たちの町であることから。

子どもたちにも人気の「ラストサムライ」は、未来へと、秋月の誇りを受け継いでいます。

タイミングが合えば、あなたも体験できるかも!

☆秋には秋月の人気紅葉スポット・名所にも

「廣久葛本舗」の裏手には、秋月紅葉の名所5選の1つである紅葉の名所が広がっています。

この白壁と野鳥川の間の小道は、第28作 昭和56年12月封切り「男はつらいよ」寅次郎紙風船のロケ地です。

秋月の秋は、鮮やかな紅に染まる木々と歴史ある街並みが調和し、まるで時代を超えたような美しさです。

ぜひ、紅葉散策とともに「久助葛」の味を楽しんでみてください。

廣久葛本舗 インフォメーション

住所:〒838-0001 福岡県朝倉市秋月532番地

TEL:0946-25-0215

営業時間:9:00~17:00

定休日:月曜日


関連記事