飯塚市・ヱビス味噌|伝統ある老舗が挑む、新しい味噌のかたちと在り様

福岡県飯塚市に、創業100年以上の歴史を持ちながら、海外展開やライフスタイルに合わせた新たな商品開発に挑戦するお味噌屋さんがあります。
その名も「ヱビス味噌醸造元 蛭子屋合名会社( 以下、ヱビス味噌 )」。

「ヱビス味噌」は大正5年に創業し、地元・飯塚市(旧 頴田町)で親しまれる手作りの味を作り続けています。
九州らしい優しい甘口で、塩分控えめなのが味噌の特徴です。
今回お話を伺ったのは「ヱビス味噌」4代目:安藤 祐基さん。

「お客さんからはよく『優しい味ですね』って言ってもらえるんです」と安藤さんは笑顔で話します。
現在は、米味噌6種類、麦味噌2種類、合わせ味噌2種類の計10種類を製造し、熟成期間も2〜3か月のものから、じっくり1年熟成のものまで幅広く仕込んでいます。

今回の記事では、「ヱビス味噌」の個性が見えるお味噌を3つに絞って、開発エピソードとともに魅力をご紹介していきます!
【1】玄米味噌|海外輸出から生まれた長期熟成玄米味噌

その時代の多くの味噌屋がそうであったように、地元の方に向けて日常使いの味噌を販売していた「ヱビス味噌」が大きく転換したのは平成10年。
スーパーや商社などに出荷していた味噌の売上減少を鑑みて、新たな販路としてナチュラルオーガニック商社を通じた海外輸出をスタートしました。

「あるとき、海外担当バイヤーから、『栄養価の高い玄米を使った麹で、一般的な九州の味噌より長く発酵させた、より身体に良い味噌を作ってほしい』とリクエストをもらって。そこから、発酵期間を3ヶ月から1年に伸ばした長期熟成味噌を開発しました。
玄米は白米に比べ麹菌がつきにくいので、麹づくりが大変で」

この長期熟成味噌はヨーロッパやアメリカなどで人気が高まり、今では「ヱビス味噌」全体の売上の3割ほどを占める人気商品に成長。
そしてこの海外向けの長期熟成発酵味噌を、国内の顧客向けに商品開発したのが「玄米味噌」です。

玄米麹の長期熟成に加え、福岡県産の米と大豆を使って、地域の特色をプラス。
九州では珍しい”黒い”味噌。
長期熟成ならではの深い味わいで、身体に染み渡るおいしさは、「ヱビス味噌」ならではの味噌に仕上がっています。
【2】スタミナ味噌|福岡県産業デザイン賞受賞の人気商品

ヱビス味噌で長年人気の「スタミナ味噌」。
合わせ味噌をベースに、唐辛子やニンニク、ごま油などを手作業で混ぜ合わせて製造されています。
焼き肉のタレや野菜炒めなどにも使える特製味噌ダレは、もともと業務用として精肉店に卸していたものを、お客様の要望を受けて一般家庭用に商品開発しなおしたもの。

平成22年に「福岡県産業デザイン賞」に応募し奨励賞を受賞出来たことで、味噌に「デザイン」を取り入れることを意識するきっかけとなり、この経験が「DIP MISO」の開発へと繋がっていきます。
【3】DIP MISO|「これがお味噌?!」な新感覚調味料

色とりどりで華やか、おしゃれなデザインの「DIP MISO(ディップ味噌)」を見て「これ、本当に味噌なの?」と驚く人も多いのだとか。
「ヱビス味噌」の各種味噌をベースに、鶏肉やトマト、あおさなどの素材を加え、お味噌汁以外の使い方を提案してくれる新感覚調味料です。
8種類の中で、1番人気の味はご飯が進む「トリゴボウ」。

ホカホカの白米と相性抜群!豆腐のトッピングや卵焼きの具にも。
2番人気は洋風テイストの「コクトマト」。

焼いたバケットに塗って!パスタソースとしてそのまま使用したりお湯で溶いてスープにしたりしてもおいしいんです。
他には「カレーチーズ」「ゴマアオサ」「アオウメ」などの味も。

「15年ほど前にこのシリーズを出したときは、他の味噌屋にこんな商品はなくて。革新的だったと思います。この商品をきっかけに、『ヱビス味噌』全体のブランディングも一気に進みました」と安藤さん。
「DIP MISO」完成後には、それまで事務所の一角でしかなかった場所を改装した直売所も、デザイン性高くリニューアル。

「DIP MISO」はこれまでと違った客層や店舗へのアプローチを可能にし、また「ヱビス味噌らしさ」を生み出す原点ともなったのでした。
ヱビス味噌の強み|中規模の味噌屋であること
全体の中で中規模程度の味噌屋に位置する「ヱビス味噌」の強みは、対応の幅広さと柔軟性。
1回の製造で約2トンの味噌を仕込める設備を持ち、海外向け商品やOEM商品などの大量生産に対応可能です。

また平成25年に品質管理の国際基準「ISO9001」、令和元年には食品安全マネジメントの国際規格「ISO22000」を取得しているのも強み。
ISO認証の取得には、製造工程の見直しや衛生管理体制の強化など、多くの手間と時間がかかります。ですが海外へ輸出するうえでは、製品の安全性や品質を国際的に証明するこうした認証が不可欠です。
それとは反対に「DIP MISO」のような、鍋ひとつ分ほどの量の加工品を手づくりできる柔軟性も持ち合わせています。

この対応の幅広さと柔軟性が、幅広い顧客層への流通・販売を可能にしています。
時代とともに、味噌汁を飲む人の減少や、個食化の進行など、味噌を取り巻く環境も変わってきました。
いま「ヱビス味噌」は、味噌屋として存続するべく、未来の方向性を模索しています。

「いま、味噌屋が次の時代に残れるかの瀬戸際なんだと感じています。時代に合わせた新しい提案を考えていかないと」
4代目が探るこの先の味噌屋の在り様。
「ヱビス味噌」の伝統、そして挑戦と変化はこの先も続いていきます。
「ヱビス味噌」が作る味噌の魅力を体験してみて

今回は「ヱビス味噌」のお味噌の中でも、個性あふれる3商品をエピソードも含めてご紹介しました。
この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ、実際に手に取って召し上がってみてくださいね。
オンラインショップでも購入可能なので、ぜひ一度、手に取ってみてください。。
実際に買える場所
① ヱビス味噌 直売所
店舗では、量り売りや小サイズのお試し味噌も販売中。
試食をしながら好みの味を選べます。ギフト包装や地方発送も可能です。
② オンラインショップ
公式サイトのオンラインショップからもご注文可能です。
ヱビス味噌醸造元 蛭子屋合名会社|インフォメーション
住所:〒820-1114 福岡県飯塚市口原746
TEL: 0948-92-1134
営業時間:平日9:00~19:00 / 日祭日10:00~18:00
定休日:第1、第3日曜日











