掛川織・花ござ-工房大木|残したい文化。福岡で最後の“い草生産者で花ござ職人”
福岡県の筑後地域は、かつて“いぐさ”の産地として栄えた場所。
昭和63年には「い草生産者 兼 加工者」である、自ら原材料であるいぐさを育てて、ござを織る職人たちが約250組もいました。
しかし、海外製品の安価なござやい草を使わない製品、そしてい草を知らない世代が増えたことで、現在は「い草生産者 兼 加工者」は、たったの1組となってしまいました。
福岡で最後の1組になった生産者兼職人・工房大木の広松さんご夫妻。
い草を育てるのには約1年半という時間がかかります。皆さん、ご存知でしたか?私は知らずに驚きました。
二人きりでの“い草”の生産はとても苦労が多いそうですが、福岡に残る最後の生産者兼職人としてのプライドのようなものも感じました。
花ござづくりは手間がかかりますがヘリをなくすために“引き込み”という技術にこだわっています。
広松さんが作る花ござは端の美しさと空間を少しでも広く感じるための“花ござ”。大切な方に贈って欲しい“心のこもったインテリア”です。
そんな広松さんご夫妻が作った色鮮やかでお洒落なデザインの「花ござ」は、
とっても落ち着くいぐさのいい香り。
玄関やリビング、洗面所、ベランダの入り口などにおすすめ。
次世代に残したい、広松さんたちの技術。そして、福岡の文化。
一人でも多くの方に知っていただき、その魅力を感じてほしいです。
ちょっと横になってひと休みするときや、ゆっくりと落ち着きたいとき、畳の香りや感触はそんな時間にぴったりです。
そして、畳の部屋がないおうちに住んでいる方でも取り入れやすいのが「ござ」。現在はリーズナブルな価格で、気軽に手に入れることもできます。
でも一般的に出回っているのはほとんどが海外産。
その品質は国産のものと圧倒的に違いがあります。
花ござ掛川織|一畳
筑後地域に伝わる“掛川織の花ござ”とは
花ござとは「染色したい草を織り込んで色柄を装飾的に織り出した“ござ”のこと」です。
玄関マットとして使ったり、机の下に敷いたりするので、言い方を変えると「い草のカーペット」という感じです。
ご紹介する花ござは、福岡県の筑後地方で生産される「掛川織」と呼ばれる織り方のもの。「紋織(もんおり)」や「袋織(ふくろおり)」など様々な織り方がありますが、なかでもこの「掛川織」は花ござの最高級品と言われており、福岡県の伝統工芸・無形文化財に指定されています。その歴史は江戸時代から続くもので、昭和55年3月に福岡県知事指定民工芸品に認定されています。現在国産花ござの生産量は筑後地域が、なんと全国の9割ほどを占めているそう。
原材料の“い草”を育てる生産者|品種:筑後みどり
掛川織の花ござに使用されている“い草”は、「筑後みどり」という福岡県のブランドい草。
花ござの生産地であるこの地域で400年前から育てられています。
「筑後みどり」は、いぐさの中にあるスポンジ状の綿が充実していて、太い・丈夫・長いという特徴があります。
だから、広松さんの花ござは、薄手のござに比べて長く使用することができ、弾力性が強いんです。
ひとつひとつ株分けしたり、田んぼに植え込んだり、長くて大きないぐさを育てるには大変な作業ばかりです。
それでも、花ござ職人として「自分が作ったいぐさで、ござを織りたい」という想いから、原材料であるいぐさを丁寧に育てています。
「い草」の心地よさ
原料はい草なので、畳のような気持ちよさや落ち着く香りは、通常のござと変わりません。い草には、リラックス効果があることが科学的にも証明されており、気持ちが落ち着いたり睡眠効果があることがわかっています。
広松さんのお宅に伺った時、お部屋にはたくさんの花ござが敷いてありました。玄関や、居間、座布団、なんとインテリアまで花ござ!取材陣は入った途端に「わぁ…!」と感嘆の声を漏らしてしまいました(笑)とってもいい香りで、思わず大きく息を吸ってみたり、規則的なござの模様に手のひらを這わせてしまいます。カラフルな色なのに、不思議と落ち着く空間でした。
お部屋に敷いていれば、ごろんと横になった時にきっと気持ちよくおやすみできたり、ゆっくりとお茶を飲んだりできますよ♪
涼しく過ごしやすい“花ござ”
“い草”の中身は空洞ではなく、スポンジのような繊維が入っています。このスポンジに吸湿効果あるため、汗を吸ってくれて通気性がよくサラッとした素材になります。涼しくて過ごしやすいです。
掛川織・花ござの良さ
「掛川織」とは、花ござの織り方のひとつ。いくつか織り方があるなかで、掛川織はその美しさや品質の良さから最高級品と言われています。福岡県の筑後地方独特の技術の織り方で、3センチの目と1センチの目が交互に繰り返す模様です。長くて良質ない草を使っているので、弾力があって手触りの良いござになります。
私は、通常のござは見たことがありますが、「花ござ」は初めて目にしました。赤や青、緑など様々な色が組み合わさっている花ござは、とても美しく、まさに“優美”とういう言葉がぴったりなものでした。
確かな技術で昔ながらの掛川織を作る職人
福岡県大木町で、代々続いてきた「掛川織・花ござ」職人の広松健男さん。
お母様も掛川織の職人で、昔から“い草”を育てながら花ござを織ることを家族で営んできました。
広松さんも高校を卒業した年から、現在まで約40年以上花ござを作り続けています。
そんな広松さんにとって奥様も大事な戦力です。い草農家のもとに生まれた奥様は、その大変さも大事なこともよく知っています。い草を育てる田んぼに行くときも、花ござの色合いを決めるときも、奥様は一緒です。
広松さんの花ござをよく知る方は「広松さんの花ござは、なんだか温かみがあるんですよね」とおっしゃっていました。そこには、広松さん1人の力ではなく、奥様と二人三脚で作っている背景があるのかもしれません。
掛川織・花ござができるまで
実はひとつの花ござができるまで、たくさんの時間と苦労があります。
特に、広松さんは花ござを織るだけなく、い草まで育てています。それは農家として働く男性と、内職をする女性がいた昔ながらの働き方の名残りです。ですが、いまも夫婦2人のみで行う広松さん夫婦にとって、花ござを作るのはとっても大変です。
【1】い草作り
い草作りはお米の稲のように、田んぼで行われます。ですがお米のように半年ではできません。約1年半ほどかけて、苗の準備から収穫まで行います。栽培は有機肥料を使い、農薬はほとんど使用しません。途中で古くなった部分を刈ったりしながら育てます。
そして、収穫して乾燥させた“い草”を染めます。染色の際は、色ムラができないように、折れたり曲がったりしないようにする技術が必要です。
【2】花ござを織る
これが花ござを織る機械です。
そして、どんなデザインにするかはこの「紋紙」が決め手になります。この小さな穴をどこに開けるかによって、模様が変わってきます。
【3】仕上げの工程-引き込み
手間がかかる「引き込み」でヘリがない花ござを作るのは福岡では広松さんだけです。もしかしたら、全国でも広松さんだけかもしれないとのこと。ヘリがないと空間が広く感じるそうです。
広松さんは接着剤を使わずに糸を“い草”のなかに折り込むことで端を止めます。こうすることで、より端を綺麗に処理することができるのす。
古くから伝わる技術を惜しみなく使って、 広松さんの 掛川織・花ござはできていました。
花ござ掛川織|一畳
福岡で最後の生産者兼職人が作る掛川織・花ござは貴重でこだわりの逸品です。皆さんに使って頂き、皆さんの大切な方に贈っていただきたいと感じています。
福岡に残していき、繋げていきたい文化です。
「掛川」工房大木
住所:〒830-0424 福岡県三潴郡大木町大字三八松2253
◇ この記事は、中小企業地域資源活用促進事業の助成金を活用して作成しています。